いつか遠い未来――なるべくは遠くあってほしいが、いつかは必ず来る未来。
 もしその時が来たら、「辛かっただろ? ゆっくり寝ろよ」と言ってアイツの頭を膝に乗せて、死ぬほど穏やかで、死ぬほど退屈な最期を迎えてやるんだ。
 まあ今は、飯だってかっ込むし、元気に訓練や任務に明け暮れてるけども。こんな日々が続けばいいのに、とも思っているはずなのに。どうしてかふと、アイツの心臓がいつか止まっちまう時のことを考えちまうんだ。
 本当は考えるだけで恐ろしい。全身に冷や汗が湧くほど怖ェはずなのに、何かあったときにいつも考えちまう。きっとコイツが正義の旗を掲げて、まるで死に急ぐような行為ばかりしているからだろう。
 今は神様の悪戯で生かされているだけで、その日はもしかしたら思ったより早く来てしまうのかもしれない。明日かもしれねェし、百年先かもしれねェ。それは誰にもわからない。
 だから最期くらい、穏やかに。海の向こうの、偉大なる航路なんて関係ねェ、正義と言う名目の自己犠牲なんて考えなくていい、楽園みたいな場所で。二人きりで、穏やかに生きて。そして、いつか来る最期の日に、アイツが少しでも安らかな気持ちでいられるように。
 そんときおれは、どうしているんだろうか。もしかしたらアイツより早くくたばっちまうかもしれねェな。とも思うし笑っちまうけども、想像くらい好きにさせてくれ。
 アイツの最期を見届けたい。副官として、友人、いや――恋人として。誰より近くで、あの頑固で真っすぐな魂が静かに燃え尽きるのを見届けたい。そばに居たい。
 おれの人生をめちゃくちゃにした男の、静かで安らかな寝顔を見届けて、
 それからようやく、泣こうと思う。

 

 

*【コビヘル】「辛かっただろう?ゆっくり、お眠り」*

  714字

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