このセリフを聞いたのは何回目だろうか。
「ごめんね、卵焼き失敗しちゃった」
そう言うとコビーが平謝りで目の前の皿を指差す。今日もいつも通りの、途中で諦めたであろうスクランブルエッグのような物体が二つ、白い皿の上に鎮座していた。
「お前ほんっと不器用な」
ヘルメッポがそれをフォークでつつくと、コビーはううと唸ってヘルメッポを見た。そう、今この食卓には二人の皿が向かい合って置かれている。いつもは食堂で食べるのだが、小さい軍艦の中など調理班がいない場合はしばし軽いものを互いに作るときもあるのだ。
ゴミが出るからあまり卵は推奨されないのだが、完全栄養食ともあってかコビーなりのこだわりなのだろう。
「どうしてもあの四角い奴じゃねェとダメなのか」
「リカちゃんの卵焼きを再現したいんだよね」
「あー……」
あのクソ甘ェやつか。と喉まで出かかってヘルメッポは思わず口を噤んだ。絶対に面倒なことになるのがわかっていたからだ。
「ま、いいんじゃねェの。どんな形でも腹に入りゃ一緒だし」
そう言ってヘルメッポはスプーンでスクランブルエッグのような卵焼きのようなものをすくい上げると、ぱくりと一口それを口に運んだ。うん、美味しい。妙に甘いのもまあこれで味わいがある。
本当はしょっぱいほうが好みだけど、とヘルメッポは心の中で付け足しながら、もぐもぐとそれを咀嚼した。
「明日もぼくが担当していいですか」
「……いいけど」
「こうなったら意地です。できるまでやりますよ!」
そう高らかに宣言してコビーはフォークで白米をすくいあげると、それを口に放り込んだ。ヘルメッポはそれを半眼で見やると、はあ、とため息を吐いた。
これは絶対に長丁場になるやつだ。そう思いながらも、まあそれも悪くないかとヘルメッポは目の前の卵焼きに再度向き直った。
「……次はもうちょい形になってるといいな」
「はい!」
卵地獄は、まだまだ続きそうだ。
*【コビヘル】「卵焼き失敗しちゃったんだ。ごめんね?」*


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