古びた扉を開くと、小さなバーカウンターがコビーを出迎えた。バーの中には紫煙がくゆっており、薄暗い雰囲気と共に心地よく頬を撫でていく。
 視線の先には、カウンターに頬杖をつくヘルメッポの姿。
「よぉ」
 いつも通りの口調とは裏腹に、煙草を咥えるその表情は少しだけ陰っている。
「業務外でも会うなんてなぁ。勘弁してくれよ」
 冗談交じりの態度に、コビーは「ヘルメッポさんが呼んだくせに」と呆れたように返事をする。
「いい酒が入ったって聞いてな」
 ヘルメッポはそう呟くと、グラスをコビーの前に差し出した。その中を覗き込むと、そこには透き通った琥珀色の液体がゆらりと揺れている。
「お前もどうだ?」
「ぼくは飲まないっていつも言ってるじゃないですか」
 思わずコビーが断ると、ヘルメッポは肩を竦めて「知ってる」と笑った。しかしその笑みはどこか力が抜けていて、普段の調子乗りな明るさとは違って見える。
 そんな微かな違和感を抱えつつ、コビーはヘルメッポの隣に腰掛けた。
「……何かあったんですか、こんな夜更けにぼくを呼びたくなるくらいの、ものが」
 コビーが尋ねると、紫煙の向こうで琥珀色がゆらめく。しばらくして、ヘルメッポはグラスを軽く揺らしぼそりと呟いた。
「……ま、ちょっち面倒な奴らと出会っちまってな。一人で飲む気分でもなかったってことだ」
 ヘルメッポはそれだけ言うと、コビーの目の前にグラスを差し出した。バーのマスターになにか言葉を交わすと、そのグラスに葡萄ジュースが注がれていく。
「だったら他の飲む人とでいいじゃないですか」
「いや、そうじゃなくて……なんだろな……」
 ヘルメッポは思わず頭を掻いたが、そのままグラスを持ちながらコビーの方へと向き直る。
「今日はお前と一緒に居たいんだよ」
 そう言うヘルメッポの頬は、照れたように赤く染まっている。あまりにもストレートな物言いにコビーは少しだけ驚いたが、いつもの調子に戻り優しく笑ってグラスをヘルメッポの方へと差し出した。
「今日も、の間違いですよね」
 カチンとグラスがぶつかる音が響く。それがきっと、合意の合図だ。

 

 

*コビヘルが好きそうなお酒について考えて理由と共にツイートしましょう。*

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