「溢れてんぞ」
「わ」
手のひらいっぱいのホットドッグをなんとか捩じ込もうと口を開いて、隣のヘルメッポさんに指摘されたときにはもう遅かった。
指の間をつつと垂れるケチャップとマスタードの混ざったソースをすくい上げ、それも含めてなんとか口に流し込む。そうしているうちに手がすっかりべたべたになってしまった。
「お前本当に食べるの下手だな」
その様子を見ていたヘルメッポさんが呆れたように笑う。
「いやこれヘルメッポさんでもなるって……いやあ、なんかめっちゃオマケしてくれちゃって申し訳ないな」
ぼくはそういいながら目の前のホットドッグを見つめる。それもそのはず、屋台で一人一個注文したはずが店主さんに顔を知られており、”英雄”のぼく相手だからかソースやらトッピングやらを目一杯盛り付けられてヘルメッポさんのより一回りも二回りも大きなモノに仕上がってしまっていたからだ。
「嫌味かよ」
「じゃあヘルメッポさんぼくの分食べる?」
「いらん」
少し眉を顰めつつ、ヘルメッポさんは手袋を外し繊細な指先で自分の分をちぎって口に放り込んだ。
「お、美味ェなこれ」
「ね」
「そもそも肉がうめェ」
そう言うとヘルメッポさんは夢中でホットドッグに食らいついた。確かにソーセージが太くて熱々で、パリッとしたバンズとケチャップマスタードがしっかり絡み合っている。ガーリックチップスが良いアクセントとなっていて、確かに他とは違う美味しさがある。
「ほんと。こういう屋台、ぼく好きだなあ」
そう独り言を呟きながら、今度は落ちないように少し控えめに齧る。口に運ぶ前にソースが垂れないようにと念のために手の上に乗せていたソーセージからまたひとしずくこぼれ落ちたのを慌てて舌で受け止める。
しかし、外で食らいつくには少しだけ恥ずかしい体勢になるので遠慮がちにしていると、また指の先から溢れちゃっているような気がした。
「……また付いてるぞ」
ヘルメッポさんが仕方ねえなあ、と言わんばかりにぼくの手をひっ掴んで、そのまま垂れそうになっているソースを舐めた。熱い舌が、ぼくの手に少し触れてドキリとする。
放心しているぼくを悪戯そうに笑う仕草も、優しそうな声色も。全部、ぼくの好きなヘルメッポさんで不意に出るそんな姿が、大好きで。
――あ、溢れてる。
心の中の温かな気持ちが、溢れてくるのを感じた。
*【コビヘル】「溢れてきてるよ」*


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