ヘルメッポさんは、モテる。
 これは恋人の欲目でもなんでもなく、他の人たちが「付き合うなら誰」って話をしていたときに名前が上がったから間違いない。そういうことを言うとヘルメッポさんは「ンなわけない」と否定するのだが、彼もれっきとした海兵でしかも少佐という立場に就いていることから彼を慕う人間は少なくない。
 きっとその中でも恋慕を持つ人だっているだろうと思うと、ぼくとしては居ても立っても居られなくなる。絶対にないって言い張っているけども、絶世の美女になんてアプローチされた日にはもう立ち直れなくなってしまうだろう。
 実際まだ、心の整理が付いていない時だってある。女ヶ島の一件だってそうだ。あのときは知っちゃかめっちゃかで考える余裕は無かったけど、たとえ悪魔の実の力だといえどもボア・ハンコックにヘルメッポさんが射抜かれていたことは間違いない事実なのだ。
 だから、もし。もしもヘルメッポさんがハンコックに靡いたらどうしようとか、他の魅力的な女性に言い寄られたらどうしようとか、そんなネガティブな考えが頭を過ぎったことが何度もある。きっとこんなことを言ったら本人に笑われてしまいそうだから言わないけども。
 でもいつかぼくを置いてどこかに行ってしまうんじゃないか。誰かと仲良くしているのを見てしまった時、ぼくは平静を装っていられるのか。そんなことを考えては一人不安になっているのだ。
 ぼくの傍に居てくれるヘルメッポさんを信じているし、彼のことを信頼もしている。でも、どうしてもその恐怖を拭い去ることはできなかった。
 今日もヘルメッポさんは軽率に他の海兵とお話している。さすがに話を邪魔する気概はないけれど、やっぱりモヤモヤするしどうしようもなくなってしまうんだ。
 だから、思わず声をかけてしまった。
「ねぇ、ヘルメッポさん」
 呼びかけると、ヘルメッポさんはいつも通りの顔でこちらを見た。何も変わっていないその表情に、ぼくは思わずぐっと息を呑む。
「さっきぼく以外の人と話してたでしょ」
 ねえヘルメッポさん。今のぼくが、どんなことを考えてるかもわからないでしょう。

 

 

*【👓⛑️語り】相手が別の誰かと親しげに話すのを目撃した時、どうするかについて語りましょう。*

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