その島では、生誕祭が開かれていた。広場には天まで突き抜けるような大樹が聳え立ち、その根元には数え切れない程の蝋燭が灯されていた。無数の炎は揺らめきながら、辺り一帯を明るく照らし出している。
 その幻想的な光景を、コビーはヘルメッポと共に見上げていた。
「すごい……。こんな大きな大樹、初めて見ました」
 コビーは目を輝かせてその大樹を仰ぎ見る。あまりに大きいので見上げても先が見えないほどだ。
 蝋燭だけではなく皆が思い思いのものを枝に飾り付けている。それはリボンの飾りだったり、ベルだったり。靴下があるのは少し謎だが、聖なる夜は皆、この大樹に集まって慎ましやかに生誕を祝うのだ。
「誰の生誕祭なんだ?」
 ヘルメッポがそう呟く。コビーはうーんと首を捻った。
「そこまではよく……でもきっと、この島の人にとっては大切な人なんですよ」
 その言葉に、ヘルメッポも納得したように頷いた。確かにここまでするとなると相当な大物の可能性がある。それはこの木にまつわるものなのか、それとももっと強大な王なのか。はたまたもっととんでもない創世記の神話の人物なのか……。それはきっとわからないが、どちらにせよ平和で賑やかなのはいいことだ。
 そんなことをヘルメッポが考えていると、ふと一人の少女が二人に近寄ってきた。
「おにーちゃん、これあげる」
 少女はそう言うと、コビーに小さな包みを手渡してきた。赤いリボンに包まれた、ささやかなプレゼントだ。
「いやっ、そんな……」
 悪いですよ。とコビーは言いかけたが、ヘルメッポに促されてしぶしぶ受け取った。
「いつも海の平和を守ってくださり、ありがとうございます。——神の御加護があらんことを」
 彼女の母親と思われる女性がお辞儀をして、少女も「メリークリスマス!」と言い残して去っていった。
「おれにはねェのかよ」
 ヘルメッポが不満そうに呟く。
「まあまあ。ヘルメッポさんにも半分あげますよ」
 コビーはそう言って苦笑しつつ、リボンを解いて包みを開けた。
 中にはチョコレートが何粒か入っていた。甘い砂糖の匂いが辺りに漂う。コビーはそのうちの一粒を取り出して、ヘルメッポに差し出した。
「はい。メリークリスマス、でしたっけ?」
 コビーの言葉に、ヘルメッポは「知らねェよ」と呆れたように肩を竦めた。そのまま無言で手を伸ばすと、チョコレートをひょいっと口の中に放り込む。コビーも一つ摘み上げて自分の口に放った。
 口の中に甘い味が広がる。舌の上でチョコレートがとろけて、程よい甘さが口全体に広がる。それと同時に、寒空の下で冷えた身体に体温が戻るような感じがした。
「ま、けど——」
 ヘルメッポがポツリと続けた。
「悪くねェ日だな」

 

 

*お題なし*

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