「好きって言ったら怒ります?」
あまりに唐突な一言に、ヘルメッポの脳内は一瞬で掻き回された。
思わず目を丸くしてしまったが、それ以上に驚いていたのはコビーの方だったようで、「やっぱり今の忘れてください」と慌てた様子で視線を逸らす。しかしその頬はほんのり赤く染まっており、それがただの照れ隠しだとすぐに分かった。
ヘルメッポは頭を掻きながら、訝しげに口を開く。
「一応聞くが、どういう意味でなんだその好きは」
「そ、それは……」
そう言うとコビーは言葉に詰まり視線を彷徨わせる。言い淀まなくてもその様子だと丸わかりだ。
おそらく友情を超えた好きの感情があるのだろう。そんなん見聞色で見なくてもわかる。しかし遂に口に出してくるとは思っていなかった。今までの相棒との関係と友人としての枠組みでうまく付き合えてきたと思っていたのだが、どうやら何かのきっかけで変わってしまったらしい。
ヘルメッポが呆れたように口を開く。
「怒らねェよ。てか、おれがお前に怒ったことなんてあったか?」
「え、めちゃくちゃあるけど」
「あったわ……」
仮にも上官なので怒るというか、窘めるような進言ではあったが。コイツはいつもそうだ。脇目もふらずずっと突っ走って……と、それは置いといてとヘルメッポは一旦思考を切り替える。
沈黙に耐えかねて、コビーがぽつりと口を開いた。
「そ、それよりも、ヘルメッポさんは……どうなんですか。怒らないってことは……そういうことで、いいんですか」
期待と不安が入り混じった瞳を向けられ、ヘルメッポは思わず目を伏せた。
変わってしまうのは怖い。だけどこれで怒るのは違うし、何よりコビーが悲しむのは見たくない。そうなるとまあ、答えはおのずと見えてくる。
「……ん。多分な」
「多分かあ」
「まあ嫌いじゃねェだけましだろ」
ちょっと残念そうにため息をつくコビーに対して、ヘルメッポは肩をすくめて誤魔化した。
自分でも意外なほどすんなり受け入れられたことに驚いている。確かに相棒と恋人という関係が両立できるのかという不安はあるが、きっとこの先の人生でコイツより大切な存在などできることはないだろう。
それならもういいんじゃないかと結論付けるしかない。だけど。
「……そうですね」
コビーがあんまり楽しそうに笑うから、ついつられてしまった。
*コビヘルのお話は「好きって言ったら怒る?」という台詞で始まり「貴方があんまり楽しそうに笑うからついつられてしまった」で終わります。*


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