コビー大佐が、喋れなくなった。
 とは言っても喉元を潰されたとかそういう話ではなく、悪魔の実の効果で一時的に声帯が空気振動を起こせなくなり、コミュニケーションを行うことが困難になった。声帯が機能しないだけで他は特に異常は見られないため、しばらく安静にしていれば治るだろうというのが軍医の見解だった。
 いつもは喋ることの多いコビーが黙ったままというのは妙な感じだが、元来の見聞色や筆談により普段通りの任務が遂行可能とわかるなり本部はこの問題を問題視するようなことはなくなった。世知辛い世の中である。
 まあ、この程度で休みをもらうのはコビーとしても本意ではないだろうとは思っているが。
『ヘルメッポさん、そこの書類を取ってください』
 筆談でメモ帳に書かれた文字が目に入り、おれは呆れながら引き出しから一枚の紙を取って渡す。
「お前さァ、こんなときまでさん付けしなくていいっつの」
 紙もったいねェじゃん。と付け加えながら言うと、コビーは口元で『✕』の字を作る。そこに関しては譲れないこだわりがあるのだろう。
『ありがとうございます』とまたもや律儀に書かれた紙を手渡され、やれやれと手持ち無沙汰にポケットに仕舞うと再び机を叩く音がした。
『ヘルメッポさん、愛しています』
「っ!?」
 ”そこの書類~”の部分を線で打ち消して追加された文に、おれは思わず言葉を失った。
「お前なにやってんだよ、馬鹿」
 思わず”愛しています”の文を打ち消すと、コビーの野郎はめげずに『ちゅーしたい』ともっと恥ずかしいことを書きやがったので負けじとその言葉を打ち消した。
『思ってるくせに』
 そう殴り書きをするとコビーは口を尖らせた。そうだ。コイツはそういう感情を読み取ることが出来る。だからまあ、おれがコビーを好きなのもバレてしまっている。
 ああ、こういうとき、嘘みたいに面倒だ。
「……ったく」
 にわかに期待を寄せるコビーの腕を掴んで、その唇を寄せる。
 言葉なんて無くても、その口はやけに雄弁だ。

 

 

 

*【コビヘル語り】相手が喋れなくなってしまった時の2人について語りましょう。*

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