「すまん……コビー。お前の気持ち、受け取れない」
いつになく真剣な表情のヘルメッポに、コビーは思わず閉口した。
「そんな……。どうしても、ダメですか?」
そのあまりの真剣さに、コビーは眉根を寄せながらヘルメッポに問いかける。しかし——ヘルメッポは小さく首を横に振るばかりだ。
「いくら言われたって無理なもんは無理だ。……お前はおれを恨むだろうが、これはどうしても変えられねェ」
ヘルメッポがそう言うと、コビーはぐっと押し黙った。まるで今までのことがすべて裏切られたかのような、そんな絶望にも近い顔色を浮かべている。
そのうち、コビーの唇がゆっくりと動いた。
「……っ、ヘルメッポさんの、嘘つき」
まるで消え入りそうな声でコビーが呟く。わなわなと肩が震えているのは、怒りかそれとも悲しみか。
「言ったじゃないですか。約束するって、この——」
それを言うとコビーはぐいと拳を突き出し、徐ろにそれを開いてみせ――。
「——虫克服するって言ったじゃないですか!!!」
……コビーの手のひらには無数の小型のワームが蠢いている。一匹一匹は小さいが、大量に手の表面を這い回る姿はまさに地獄絵図。そのあまりの悍ましさにヘルメッポは思わずそっぽを向いた。
「ううううるせェ!! 無理なもんは無理なの!!」
明らかにビビっているヘルメッポに、コビーは負けじと食らいつく。
「餌用のワームですら無理じゃ、こんなんじゃぼくたちいつまで経っても釣りにいけないじゃないですか!! どんな相手でも立ち向かう正義はどこへ行ったんですか!!」
「こんなんで正義もへったくれもあるかァ!!」
ヘルメッポの嘆きをよそに、コビーはワームを数匹取り出してぐいと差し出した。
「ほらほら、せっかくだから今克服しちゃいましょうよ。大丈夫。慣れたらいけますって」
「お、おい、コビー……」
制止の声もむなしく、コビーはヘルメッポの手を掴み、そして――。
「ギャ―――ッ!!」
ヘルメッポの叫びが水平線へとこだました。今日も海は青く澄んでいる。
*【コビヘル】「お前の気持ち、受け取れない」*


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